突然の別れ

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 私はそう言って、山中さんとは反対方向に進んでいった。もう振り返らない。そう固く決意し、なるべく彼の近くには寄らないでおくことも心がけた。  ナースコールの対応などをしながら夜は更ける。零時には再度巡視があるので、みんなで暗くなった部屋を一つ一つ訪問していく。廊下も電気は消されており、中央にあるトイレのあかりだけが漏れていた。昼間よりずっと静まり返った病棟内で、カートを押す音だけが響いている。古くなって接触が悪いのか、時折キイキイと高い音が漏れていた。  私はなるべく山中さんの近くには寄らないようにしていた。が、それも限界がある。なんせ、彼のすぐ前にはもちろん病室がある。ナースコールで呼ばれれば行かねばならない。仕事をしているうえで、完全に彼を避けるのは無理なのだ。  慌ただしく動いていると、休憩時間がやってくる。看護師が交代で二時間ずつ仮眠を取れるのだ。一人目は一時から三時、二人目は二時から四時、そして三人目が三時から五時、というわけだ。
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