突然の別れ

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 まず緑川さんが一番最初に休憩に入ることになった。私ともう一人のメンバーは、静かなステーションで仕事をこなしていると、二時が訪れる。そのまま仲間も休憩に入り、私は一人残された。    二時から三時まではどうしても、一人で病棟を見ることになる。仲間を見送り、一人パソコンの前に座って記録を読んでいた。真夜中ともなれば、時々トイレに呼ぶ患者がいるくらいで、比較的静かだった。  普段なら、この一時間はどうってことない。だが今日は、絶望を覚えた気になった。  早く緑川さんに帰ってきてほしい、と心で思う。山中さんに指さされたシーンが、蘇って仕方ないのだ。言ってしまえば、なんだか怖い。 (はーあ。こんな時に限ってナースコールも鳴らないなあ。いっそ忙しいと気が紛れるのに)  げんなりしながら時計ばかり眺めていると、突然ステーション内に大きな音が響いた。  ピンポーン  ナースコールだった。  私は立ち上がる。コールはこちらが停止ボタンを押さなければ止まることなく鳴り続けてしまう。私はすぐに音をを止め、どこの部屋か見てみた。ランプが表示されているのは605、個室の部屋だった。
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