突然の別れ

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 耳を塞いでも止まない。延々と声が続く。山中さんは笑ったまま、私を指さし続けている。頭が狂いそうになる。山中さんと二人、どこかの世界へ飛ばされたような感覚だ。  やっぱり声かけるんじゃなかった。見えない振りをすればよかった!  そう後悔しながら、自分の口から叫び声が上がりそうになる。だめだ、叫んではだめ。こんなところで叫んでしまってはどうなるか。  必死に自分が自分を止めるが、恐怖に勝てない。ついに喉から声が漏れそうになった。  途端、その口を誰かが塞いだ。突然のことに驚きで体を強張らせる。何が起きたのか分からないでいると、隣から聞き覚えのある声がした。 「だから関わるなって言ったのに」  反射的に左を見てみる。藍沢先生が、私を抱き寄せるようにして腕を回し、口を塞いでいたのだ。先生に触れられているのだと分かった瞬間、頭が真っ白になり、完全に体は動かなくなってしまった。  そんな私をよそに、先生は山中さんを見ている。山中さんはいつのまにか、笑うのを止めて静かにこちらを見ていた。 「あまりいじめないでくれるか。この子は何も出来ないよ。これ以上纏わりつくようなら消す」
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