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「俺の忠告聞いてたよね?」
ステーションに戻るなり、呆れた声が私を襲った。無言で頭を垂れる。先生ははあとため息をついて椅子に座り込んだ。まさかその隣に腰かける勇気が出るわけもなく、立ったまま反省する。
「すみません……」
「なんとなくこうなる気がしていた」
「患者のナースコールを使って呼ばれるようになっちゃって。止めるには説得しかないかと」
「そんなに執拗に呼ぶなら、視えること相手にばれてるだろう」
「ぎく」
「どうせその前から気にかけてたんだろう」
その通りだ。私は言い訳もできず、ただ謝るしかできない。
「すみません……ていうか、先生どうしてここに?」
夜勤始まる前まで、先生は病棟にいた。いつの間にか帰ったんだと思っていたけれど、こんな真夜中になぜいるのか。見たところ、白衣でもなく私服だ。この前のように、黒い服を身にまとっている。
私の質問に、視線をそらしながら言う。
「別に、忘れ物」
「ええ、こんな夜中にですか……?」
「それより、まだあの人残ってる。普通、消すぞって脅されれば、大概のものはどっか消えていくんだけどな。あれは相当執着しているな」
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