突然の別れ

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 考え込むように言った先生に、私は持っていた疑問をぶつけた。 「消す、って言ってましたけど、先生出来るんですか?」 「まあ、出来ないこともない」 「凄い! 羨ましい! 私はそういうこと一切できないんです」  羨望の眼差しで見てしまう。もし祓ったりとか、そういうことができるなら、私ももう少し違った人生だったかもしれないと思う。これほど困ったり、怖がったりしなくて済んだかもしれないのだ。  しかし先生は首を振った。 「言っておくがあくまで素人がやるものだ、強い相手は無理だし、成功するとも限らない。  何より、普段職場では、そんなことをする時間も場所もない。病院に休みはないから」  言われて確かに、と納得してしまった。先生が視えるということは、私以外誰も知らない。常に人が行き交うこの病棟で、誰にも見られず霊を追い払うなんてタイミングはなかなか存在しないのだ。正直、霊より生きている患者で手一杯なところもある。  先生がちらりと廊下の方を見て言った。ここからは、山中さんの姿は見えない。
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