1749人が本棚に入れています
本棚に追加
「だがまあ、今は絶好のチャンスだとも言える。もう少ししたらほかの看護師の休憩が終わるだろう? その前にちゃっちゃとやってしまうこともできる」
「え、それって……山中さんを除霊するってことですか?」
「あまりたいそうな言い方はしないでもらいたい。失敗することも多々ある」
言われて、ぐっと押し黙った。山中さんを消す? そりゃ、あそこにいるのは正直困る。患者のナースコールを使って呼ばれるなんて業務に支障も出る。できれば今、絶好のチャンスを使って、先生に祓ってもらった方がいいに決まってる。
でも。どうしても、頭から消えない。
それは恐ろしい形相で私を見ていた顔ではなく、生前優しく笑っていた山中さん、そしてさっき去り際、悲しそうにしていた顔だ。あんな顔をする彼を、このまま追い払っていいんだろうか。
「今しかチャンスはないな。成功するかは分からないが、やってみる価値はある」
立ち上がろうとした先生に、私は慌てて声を掛けた。
「待ってください!」
「……何」
最初のコメントを投稿しよう!