突然の別れ

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 きっぱり言い切られたとき、あまりな言い草にムッとしてしまった。先生の言うことは間違ってはいないけど、随分冷たいように聞こえる。誰かの力になりたい、と思うことが、それほど駄目なことだろうか。  先生は知っているはず。死と隣合わせに生きる人たちが、どれほど絶望を覚えながら必死に闘っているのか。苦しみつつも、残された時間を懸命に生きているのか。それほど頑張ってきた人たちに、死んだあと安らかにしてほしいと思うのは普通ではないのか。  そう言い返そうとしたとき、ステーション内に声が響いた。 「休憩ありがとうございましたー。あれ? 先生?」  きょとんとした緑川さんが入ってきた。時計を見上げてみると、確かにもう三時だ。いつの間にか結構時間が経っていたらしい。  先生は何事もなかったように立ちあがり、涼しい顔をしていった。 「お疲れ様です。忘れものをして取りに戻ってきました」 「あら、お疲れ様です」 「では、俺はこれで」
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