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とはいえ叫べないので、思いきり伸びをしながらアパートの階段を上っていく。三階まで登ったところで、見慣れたあの子が泣いていた。部屋の前でひたすら肩を震わせているパーマの子。それを見て、一気に脳裏に山中さんのことが思い出された。満ちていた解放感も、どこかへ吹き飛んで気分が落ちる。
結局何も解決してないんだよなあ、山中さん。次の出勤の時もいるだろうか。どうしたら眠ってくれるんだろうか……。
必死に考えながら部屋に入る。靴を適当に脱ぎ捨てた。部屋はよくあるタイプの1Kだ。広さは十畳ほどで、広いクローゼットもあるので自分は十分だと思っている。
疲れたので持っていた荷物も適当に投げ捨てた。そしてまずは床にごろりと寝そべる。ベッドにインしたいけど、まずお風呂に入らなければ。このままではベッドには上がれない。
「うーん、何を見てほしいんだろう」
ぼんやり考える。生前、山中さんを受け持つことが多かった私は結構会話も交わしたはず。何かヒントになりそうなことはなかっただろうか。
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