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なぜだか凄く気になる。私の脳の奥底で、何かがこれだと知らせている。
そう、そういえば。あの時、このペンを持ち帰っていた。先生と待ち合わせていることで舞い上がっていたせいでそうしたんだ、と思っていたけれど、思えばこの一本だけ持ち帰るのは不自然だった。持って帰るなら、今日みたいに数本まとめてポケットに入れっぱなしにしているはず。
そして先生と車で会う直前、私は山中さんに会っていた……。
じっと見つめたのち、なんとなく接続部を回して外してみる。インクが半分になった芯の部分がするりと手のひらに零れてきた。と同時に、折りたたまれた小さな紙が出てきたのだ。
「え?」
ぎょっとして目を丸くする。もちろんこんな中にメモ用紙を入れた記憶はない。白い紙を手にし、ゆっくりとそれを開いてみる。
中は簡素なものだった。図形が書いてあるだけだったのだ。私は首を傾げる。
中央には横長の長方形がある。その右上に、今度は小さめの正方形が記されている。その正方形には、赤いインクで小さな丸がある。たったそれだけの図だった。言葉は何一つ書かれていない。
「なにこれ……どういうこと?」
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