1749人が本棚に入れています
本棚に追加
正直に言うと、先生は眉をひそめた。うう、あの顔怖くて苦手なんだよね。でもそんなことも言ってられないので、私は続けた。
「夜勤終わり、家にいたら、玄関の前まで」
「中には」
「あ、私の部屋は入られないようお札とか置いてあるので、中には入れなかったんじゃないかと」
「ふうん、そういうところはちゃんとしてるんだ」
「は、ってなんですか、はって」
「それで? 家にまでついて行ったのに、なぜすぐ戻ってきたんだ? 家の中に入れなかったから諦めたとでも?」
私はポケットから例の紙を取り出した。先生の元へ数段降り、それを差し出してみる。彼は不思議そうにそれを見た。
「なに、これ」
「あの……この用紙、ペンの中から見つかりました」
「何?」
「覚えてますか、先生の車に乗った日落としたペンです。思えば一本だけ持ってたのは不思議なんです。私いつもペンは数本ポケットに入れて、着替えるときにロッカーに入れて帰るから。間違えて持ち帰るとしたら、数本あるはず。でも、あの日はこれだけ鞄に入ってた」
「……」
最初のコメントを投稿しよう!