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「先生と会う直前、山中さんとたまたま会ってたんです。その時、私の鞄に忍ばせたんじゃないかと。
山中さんが言っていた、見てほしい、はこれだったんだと思います。指さしていたのも、私というよりポケットに入れておいたペンを指していたんでしょう。無事見つけられわけですが、一体これが何を意味しているのかさっぱりで」
「ちょっと待て。生前、わざわざ看護師のペンの中にそれを忍ばせた? おかしすぎるじゃないか、なんでそんなことを?」
「分かりません。もしかして、山中さんほかに頼れる人がいないっぽかったから、私に託したんでしょうか」
「まあ、彼は結婚もしてなかったし、弟とも不仲みたいだったけど……てゆうか、本当俺の忠告全無視だな」
そう言われて、気まずくなり俯いた。だが先生は諦めた、というように深いため息をつき、それ以降何も言わなかった。
彼はじっと考える。そして、無言で私の手から紙を取った。腕を組み、それを眺める。
私は横から背伸びして覗き込むようにし、一緒に紙を見た。
「これ、何だと思います? 私全然わからなくって」
「近い」
「え? あ! ごごごめんなさい!!」
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