1749人が本棚に入れています
本棚に追加
慌てて下がる。忘れてた、先生は女が苦手なんだった。
「またひょっって言っちゃいますね、ひょっって!」
「馬鹿にしてる?」
「ししし、してませんよ!」
じとっと睨まれて、首を振った。睨むと迫力が凄いんだよ男前は!
先生は不機嫌そうに私に紙を返した。
「分かりませんよねえ、これ。私も休みだったから考えてたんですけど、見当もつかな」
「病室」
「……へ?」
「それ、病室じゃない?」
サラリと言われた言葉に、再度紙を見つめる。先生は長い人差し指を出し、紙にそっと乗せた。
「この長い長方形が、ベッド」
「……」
「正方形の方は、床頭台だ」
「あ」
「ぐらいにしか、俺には見えない」
口を開けて図を眺めた。そうだ、確かにそう見える。大部屋の病室は、一人のスペースは広いとは言えず、ベッドとサイドテーブル、あとは物を入れたりする床頭台があるのみだ。ここに書かれた図は、まさに山中さんが最期まで過ごしていた病室のつくりに見える。
「本当だ……なんで気づかなかったんだろ」
最初のコメントを投稿しよう!