見てほしいもの

15/42
前へ
/273ページ
次へ
 慌てて下がる。忘れてた、先生は女が苦手なんだった。 「またひょっって言っちゃいますね、ひょっって!」 「馬鹿にしてる?」 「ししし、してませんよ!」  じとっと睨まれて、首を振った。睨むと迫力が凄いんだよ男前は!  先生は不機嫌そうに私に紙を返した。 「分かりませんよねえ、これ。私も休みだったから考えてたんですけど、見当もつかな」 「病室」 「……へ?」 「それ、病室じゃない?」    サラリと言われた言葉に、再度紙を見つめる。先生は長い人差し指を出し、紙にそっと乗せた。 「この長い長方形が、ベッド」 「……」 「正方形の方は、床頭台だ」 「あ」 「ぐらいにしか、俺には見えない」  口を開けて図を眺めた。そうだ、確かにそう見える。大部屋の病室は、一人のスペースは広いとは言えず、ベッドとサイドテーブル、あとは物を入れたりする床頭台があるのみだ。ここに書かれた図は、まさに山中さんが最期まで過ごしていた病室のつくりに見える。 「本当だ……なんで気づかなかったんだろ」
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1749人が本棚に入れています
本棚に追加