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病棟にたどり着き、とりあえずこなさねばならない仕事をまず済ませた。退勤時間がやってきて、日が落ちてくる。仕事を終えた仲間たちが、私の進捗具合を尋ねてきてくれる。あとはカルテの記入のみなので先に帰って、と伝えると、彼女たちは上がっていった。
日勤帯の看護師たちは去り、ぐっと病棟内の人数が減る。私はステーションでパソコンと向かい合っていた。実はもう記録は全員分終わっている。部屋を探しに行くタイミングを見計らっていた。
ちらりとあたりを見ると、今は誰もいなかった。みんな出払っているらしい。そっと立ち上がり、廊下を覗き込んだ。山中さんが一人立っている。
今から見つけに行きます。そう心で呼びかける。
私は例の大部屋に向かう。右側の窓際、そこが山中さんのいた場所だった。
部屋に入ると、他の患者はそれぞれカーテンが引かれており中は見えない。私は静かに奥まで進んだ。誰もいないベッドなので、そこだけカーテンは解放されていた。
現在は皺ひとつない真っ白なシーツがかけられていた。無論荷物も何もなく、誰かがいるときより幾分か広く感じた。
私はすぐに床頭台に近づいてみる。
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