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本当にあった。山中さんが隠したんだ。一体なぜ? 何を? 分からない。ただ、彼が死んでもなお私に伝えたいことは存在したのだ。
私は緊張しながら手を伸ばす。なかなか高い位置だったが、背伸びして何とか手に入れた。本当に小さなサイズだ、これではぱっと見は気づかれないかもしれない。箱は丁寧に紙で包まれていた。
「何? これ」
そう呟いたとき、廊下からカートを押す音が近づいてきた。看護師が回ってきたのかもしれない、もう上がったはずの私がこんなところにいたら変に思われるだろう。慌てて床頭台をもとに戻した。
箱はしっかりポケットにしまうと、何事もなかったように部屋から出る。やはり、勤務している宇佐美さんがこちらを見て目を丸くした。
「あれ? どうした? 日勤でしょ?」
「はい、メモ帳を落として探してました! 無事見つかったのでよかったです」
「そう! お疲れー」
「お疲れ様です、お先失礼します」
私はそう自然に挨拶をかわし、そそくさとその場から立ち去った。そしてはやる気持ちを抑え、荷物だけ持つと、すぐさまスタッフ館の方へ向かったのだ。
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