見てほしいもの

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 ドキドキしながら包装紙を開けていく。緊張で手がやや震えていた。一体何がここに入っているのか。山中さんが死んでもなお伝えたかったものとは。  白い紙をはがし終えると、そこに出てきたのは小さな木箱だった。そして、箱の上には山中さんの直筆と思しき字があった。油性ペンで書かれたであろう字は、木にインクが染み込んでわずかに滲んでいる。  そこに書かれているものを見て、はっとあることを思い出した。頭の中で、あるシーンが光のように走る。 『生まれ変わったら 今度こそ君と』  それは確か、山中さんが亡くなる前日に交わした会話。なぜ忘れていたんだろう、彼が話してくれたこと。  結婚したい相手がいた。でも、年が二十以上も離れていたため周りから反対され、結局実現しなかった。相手は今どこで何をしてるのかもわからず、彼が入院したことや病に侵されていることも知らない、と言っていた。  本気の恋だったと、彼は言っていた。今はもう未練なんてないと笑っていたが、あれはやはり強がりだったのだ。心の奥底で、人生で最も愛した人を想っていたのだろう。 「じゃあ、これ、その恋人に宛てた……」
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