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ぐっと心に決意を固めた。これを渡せば……彼は眠れるんだろう。まあ、色々問題はある。ただの看護師である私から渡されるなんて、相手も怪しむだろうし。
「中に住所とか書いてあるのかな、相手に届けるのにそれがないと」
どう届けよう。やはり、生前預かっていましたというしかない。上手く渡せるだろうか。
私はそっと箱を開いてみる。重さや大きさからして、アクセサリーや手紙などだろうか? 蓋を持ち上げると、ひらりと何かが落ちてきた。空中を舞って床に落ちる。
「あ、紙が落ちちゃった」
そう視線を落としたとき、私は息をするのを忘れた。
私の写真だった。
「…………え」
小さな声が口から漏れる。白衣を着ている私の横顔。小さくプリントされているし画質もあまりよくないので見にくいが、まさか自分の顔を見間違えるわけがない。働いている最中撮られたと思われるもの。
「なん……」
一気に心臓がうるさくなる。何が起きているのか理解できていなかった。自分の写真がなぜ、中から。
ゆっくりゆっくり、手のひらに収まっていた箱に視線を動かした。そこにあったのは指輪でもネックレスでもない。
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