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第四章
朝起きるとマモルとサトルが消えていた。
散乱している缶ビールとおつまみの皿。
ユウキは起き上がりドアを開けて外に出た。
朝の眩しい光に目を瞬かせながら、手すりにもたれかかる。
‥‥結局、最後まで言えなかった。
ユウキの携帯の着信音が鳴った。
亡くなった恋人ミキの親友、鈴木ツグミだ。
ミキとツグミは大親友で、何でも話せる間柄だった。
彼女たちを観ていると、真の親友ってどういうものか良く分かった。
お互いに相手を思いやるが、決して縛らない。
自立した関係。
ミキが亡くなった時のツグミの号泣した姿が今でも忘れられない。
ミキが亡くなった後も親友として、俺に接してくれている。
「もしもし、どうだった?
ちゃんとお別れ出来た?」
「うん」
階段を降りながら答えた。
「恨んでなかった?」
「‥‥
結局、言えなかった」
「分かった。
とりあえずこっちに来れる?」
「うん。
今から行く」
「待ってるから」
ユウキが玄関口から外にを出ると、アパートに向かって振り向いた。
ごめん。
俺は火の回ったあの部屋で泣き崩れているところを、ツグミに助け起こされて逃げてしまった。
直ぐに部屋に引き返したがそこら中に飛び火して近付けなかった。
大声で「逃げろ!!」って叫んで手を振った。
お前らは、あの時、俺が助け出したと勘違いをしていたみたいだけど、全然逆だったんだ。
俺が中にいたんじゃなくて、燃え盛る部屋の中いたのはお前たちなんだ。
見殺しにしたのは俺の方だ。
すまない。許してくれ。
それからここからが本題。
他に友達が出来る度に、なんだかんだと邪魔をしたね。
コイツらに俺たちの事なんか理解出来ないと。
中には理解してくれた人もいたんだよ。
それが嫌で、お前たちから離れようとした事もあった。
でも、そうはさせてくれなかった。
彼女ができると、俺たちの仲を引き裂こうとしていたね。
親友なら俺の幸せを願ってくれると信じていたのに。
ミキは特別だった。
俺はミキを本気で愛してた。
ミキも俺を本気で愛してくれた。
ミキを虐めるのはやめてくれって何度も頼んだよな?
なのに、何であんな酷いことを。
結局、ミキは精神を病んで、焼身自殺した。
繊細な子だったが、いつも優しく俺を包んでくれた。
新しい世界を教えてくれた。
ミキが二股?
男性恐怖症のミキには、二股など断じて出来ないのだ。
ツグミもそう言っていた。
この計画は「彼女」が考えた。
火は俺が付けたんだ。
涙が止まらなかったよ。
結局ね、俺が一番身勝手な人間だったんだよ。
お前たちが俺を束縛するように、俺はお前たちに依存していたんだ。
でも‥‥。
最後に会えて良かった。
さよなら、親友。
いままでありがとう。
これからは「彼女」と生きて行くよ。
去って行くユウキの背中には、愛おしいそうにしがみついているミキの姿があった。
ーーー そう、「彼女」と。
(おわり)
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