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ゲートを通り抜け山道を進むと突然視界が開けた。
「うわっ!何ですか!まるで西洋のお城みたいじゃないですか!城壁って」
車が近づくと鉄製の落とし格子がゆっくりと上がった。
城壁門を抜け石造りの建物の間を通ると秋桜が咲誇る庭園が現れた。
「うわっ!な、ここを進んでいいのかな?」
庭園を抜けると円柱型の建物が見えた。
「正面の建物にフロントがあるのよ」
「えっ!」
さっきまでほとんど口を開かなかった声に驚いた。
「あっ、フロントですか。あれっ?神崎さん、このホテル来たことあるんですか?」
「・・・・」
無言の返事。
「神崎さん?」
「佐藤さん、明日の説明会の前までに話しておきたい事があるの。今夜、時間もらえる?」
何とも言えない真剣な声音に僕は『はい』と一言返事をすることしかできなかった。
円柱の建物の前に車を進めると玄関口で5人に迎えられた。
丁寧に頭を下げられ「お帰りなさいませ」と招き入れられる。
執事の様な人物が身体を起こすと控えていた他の4人がまるでそよ風の様な動きでそれぞれの役割を果たしていく。
僕は求められるままに車のキーを手渡し颯爽と前を歩く彼女の背中を追った。
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