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フロントは8階建ての円柱の建物の1階でロビーは吹き抜けの明るい雰囲気だ。
ソファに座りチェックインを済ませる。
執事以外の人影がなく何とも落ち着かない。
「宿泊客が重ならない様にしてあるのよ。お忍びで使う宿だから」
僕のソワソワを感じ取ったのか庭園へ目を向けながらポツリと呟いた。
ザワッザワッ!!!
静かだったロビーが突然ザワついた。
「お待ちくださいっ!山神様っ!」
何か揉めている様な声が聞こえる。
「支配人、一目でいいんだ。華に会わせてくれっ!」
「いいえ、会わせる訳にはまいりません」
僕は立ち上がり争う声が聞こえる方を見た。
男性客が僕らの方へ来ようとしているのをホテルマンが阻止している。
「何でしょうね。何か揉めていますよ」
目を向けると彼女は両手で腕を掴み身体を硬くしていた。
「神崎さん?具合悪いですか?」
僕が身体を屈めて顔を覗き込もうとした瞬間だった。
「華っ!話がしたいっ!華っ!」
ホテルマンに拘束された男性客がロビーに響き渡る声を上げた。
「華って、神崎さんの事ですか?」
僕は膝を絨毯に付けて彼女の顔を覗いた。
血の気の引いた真っ青な顔でブルブルと震えている。
「!!神崎さんっ!どうしましたかっ!ちょ、あっ!」
男性客を拘束していたホテルマンが彼女に駆け寄り抱き上げた。
「華、大丈夫だ。兄さんがついている」
彼女はホテルマンの胸に顔をうずめた。
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