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扉の傍で満天の星を眺めていると右手から僕を呼ぶ声がした。
「佐藤さん?」
濃紺の夜空に溶け込んでしまいそうな服が風になびいている。
普段の切れ味を全く感じさせない彼女の姿に暫く見惚れていた。
「佐藤さん、ごめんなさい」
僕に近づき深々と頭を下げる。
「えっ、えっ、何がです?」
僕は戸惑う。
「もっと、早くに色々と話しておけばよかったと思って。迷惑かけてしまって、ごめんなさい」
「えっ、僕、迷惑なんて一つもかけられてないですよ。何か色々驚きはしましたけど。ただ3年も神崎さんと一緒に仕事しているのに仕事以外のことお互い何も知らないなって。そこは反省しています」
僕は思ったままを口にした。
「うん、佐藤さんといると私はとても楽なのよ。仕事以外の余計な詮索は一切しないし私が好む距離感を保ってくれる。だから甘えていたの。ごめんなさい」
「あ~それは僕もです。神崎さん楽です。仕事に集中できる所も神崎さんが一心不乱になってるから僕も倣えるっていうか」
「今日、車中で時間欲しいって言ったでしょう。私の事を私の過去を話したいと思っていたの。この仕事を受けるのであれば私の背景を知っていて欲しくて。また迷惑かけてしまうけれど」
「いいんですよ。僕ら相棒じゃないですか。迷惑なんてお互い思わないでしょ」
彼女はうん、と小さく頷いた。
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