頭の天辺から足の爪先まで

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「じゃあ、またね」 「うん、待っているね」  シャンパはゆっくり蓋を閉めました。  つづいて蓋からハンドルを回す音が響いてきました。  私はその蓋に耳を当て、シャンパが梯子を下りていく音を最後まで聞いていました。  冷たい蓋とあふれる涙で私の顔はすっかり冷えてしまいました。  沢山の荷物を抱えて『家』と呼ばれた部屋へ向かいます。  部屋の中は地中での暮らしと変わらない作りで、私はすぐにベッドに横になり眠りました。  深く、深く眠りました…。  気がつくと、部屋の中が明るすぎて飛び起きました。  どこかに火でも出たのでしょうか。  部屋の外まで明るい。  部屋の外の天井を見上げると、遠くで光り輝く何かがありました。  目をチカチカさせながら慌てて部屋に戻り、火がここまで燃え移ってこないかを心配しました。  家の横にはたくさんの水が流れる道があり、溢れてしまわないか心配になりました。  どうやら大丈夫のようなので、食事の支度を始めます。  そして、別の部屋に書庫を見つけ、私は地上での暮らしを学びました。  シャンパはきっと来てくれる。  そう自分に毎日言い聞かせながら、数年が経ちました。
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