頭の天辺から足の爪先まで

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「今時、地中人の命を奪うなんて非人道的行為はナンセンスです。地上人の医療技術はソレに匹敵するほどではなくとも、日々向上しているのですよ」  市長が言う事は信じられるのでしょうか。  だとしたら、何故私達は攻め入られ、捕獲されたのでしょう。 「そう、どうしてもあなた方地中人の身体を利用した方が、確実で、特に高度な医療技術も必要なく、便利なものですから、闇ブローカーが存在するんですよ。あなた方は地中に住んでみえるので、一体どれだけの被害を受けているのかが私達善良な地上人には把握できないのです」  市長は私に温かい紅茶を差し出してきました。  とてもじゃない、私達が地中で暮らしていた時には手に入らなかった、香り高い紅茶です。 「私はあなた方地中人に『地上で生きる権利』を与えたいと思います。これがどういうことかお分かりですかな?そう、その権利を手にした時から、捕獲されてはいけない事になるのです。つまり、もう闇ブローカーの影におびえなくていい」  地上で生きる?  私達の生き残りがいれば、皆地上で安全に暮らせるというのでしょうか。 「あなた方地中人のみが生きる街を一つ作りましょう。そこであなた方は家族を作り、子を成し、未来永劫太陽の下で生きることが出来るのです」
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