頭の天辺から足の爪先まで

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 地上で生きることは、初めてのことが多く、とても楽しい。  見たことが無い花、知らなかった空、壁のない大地。  だけど私達の身体には色素がほとんど無いので、太陽の下で過ごすのは正直辛いのです。  なので、地上で住む提案はお断りし、『生きる権利』のみお願いしようと思いました。 「さぁ、地中のお仲間を呼んできてください。どこですか?あなたが住んでいた集落にでも出入口があるのですかな?」  市長が私に顔を近づけ、迫ってきました。  その時、私は見たのです。  市長がギラつかせているその瞳。  瞳孔が、楕円形だったのです。  しかも、わたしはその瞳に見覚えがありました。  懐かしい、私を見つめる優しい瞳。 「…市長。あなたはシャンパのを移植しましたね」  人種根絶の危機的状況に陥った時に宿した命が、トクン、と動きました。
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