頭の天辺から足の爪先まで

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「この通路は、地上へ出て食料や物資を調達するために存在していて、一部の仲間しか知らないんだ」  そう言ってシャンパはマーシャの分の持ち出し用鞄を私に託しました。 「シャンパ?」 「…ユーラ、地上に逃げて」  シャンパは何を言っているのでしょうか。  地上人から逃げるために、地上人が住む地上に逃げる?  そんなことに意味があるのでしょうか。 「この通路を上がれば、地上人が住んでいない寂びれた集落に出る。そこで、ユーラは生きるんだ」 「…シャンパは?一緒に行くのよね?」 「僕は…この通路を塞ぐために残るよ。こちら側からはわからないようにするために」 「嫌よ!それなら私もここに残る!」  ひとりぼっちで暮らすなんて、絶対嫌だ。 「ユーラ、聞いて。僕達地中人の血を絶やさないためにも、絶対女性の誰かは生き残らないといけない。女性は、人種根絶の危機的状況に陥った時、お腹に新しい生命を宿すことが出来るんだ。ユーラはまだ身体が未熟だから妊娠することはないけれど、地上で生き抜いて、子孫を増やして、僕達が生きた証を残して欲しい」  シャンパは、まっすぐな目をして私に訴えました。  私は、もうそれを拒否できる状況ではないのだと悟りました。
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