頭の天辺から足の爪先まで

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「ねぇ、お願い。シャンパも一緒に来て。私ひとりで生きていくなんて、そんなの嫌だ」  私は顔だけ地上にだしたシャンパの首にすがって泣きました。  シャンパは私の手を優しくほどき、握りしめました。 「ダメだよ、この通路は絶対に地中に攻め入ってきた地上人にはバレたくないんだ。この集落が見つかってしまうから。この竪穴の蓋を閉じて、竪穴と地中をつなぐ扉を隠して…」  シャンパは少し目をつむって黙り、何かを思い浮かべているようです。 「今回、上手く地上人から逃げきれたら、誰かに協力してもらって僕もここに来るよ。だから、それまで待っていて」  あまりにも清々しくシャンパが言うものだから、とてもじゃない、本気には聞こえませんでした。  だけど、私はそのシャンパの気持ちに応えることにしました。 「わかった、約束よ。絶対、絶対来てね…待っているから」  私は精一杯の笑顔を作りました。  だけど、目から溢れる涙だけは止めることが出来ませんでした。  シャンパは私にそっとキスをしました。  小さな頃はよくシャンパとキスをしました。  だけど、ここ数年はいくら結婚の約束をしていても、お互い恥ずかしくてキスなんてできませんでした。  久しぶりのシャンパのキスは…冷たく、震えていました。
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