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放課後、夕日色に染まる
わたしは走っていた。
大輝を追いかけて。
「待って!!」
声を上げると大輝とその友達が振り向いた。
「お、佐々木さんじゃん」
わたしはその声を無視して
大輝の手を掴むと校舎に向かって
走り出した。
後ろから「ヒューヒュー」と聞こえてきたけど
気にしない。
「陽葵待てよっ」
「待たない!」
わたしは教室に向かい走り続けた。
教室につくと大輝は気まずそうな顔で
「話って何?」と聞いてきた。
「あのね……。わたし別れようって言ったけど本当は大輝のこと好き」
夕日が大輝の顔を照らし、オレンジ色に染まる。
「知ってるよ」
大輝は呆れたように言った。
「え?」
「陽葵は分かりやすいからな、菜々が俺のこと好きだってことに気づいたんだろ。だから別れようなんて言ったんだろ?」
えっ、どうしてそのことを。
「友達に聞いたんだよ、菜々が俺のこと好きだって噂が流れてるって。だから待ってたんだ。俺。陽葵が戻ってくるのを。陽葵、辛かったな」
大輝がわたしの頭を撫でてくれる。
大輝の優しさに涙がこぼれた。
「大輝〜」
わたしは大輝に抱きついた。
なんて優しいんだろう。
こんなに優しい人たちに囲まれてわたしは幸せ者だ。
「ヨシヨシ」
「子供扱いしないでよー」
わたしは泣きながら笑う。
大輝はわたしから体を離すと
「もう一度、俺と付き合ってくれるか?」
と微笑んだ。
もう答えは決まっている。
「もちろん!」
わたしは最高の笑顔を見せた。
放課後、夕日色に染まる教室でわたしたちも
夕日色の恋に染められた。
終わり
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