失恋

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失恋

夕日が空をオレンジ色に染めている。 綺麗だな。 わたしはその夕日をボーッと眺めていた。 「陽葵」 聞き馴染みのある声に振り向くと、幼馴染の大輝がいた。 「どうしたんだ?」 心配そうな顔に、わたしは自分が泣いていたこと に気づく。 わたしは慌てて涙を拭うと 「なんでもない」 と笑顔を見せた。 わたしは、ついさっき、葉山先輩に振られた。 『好きな人がいるからごめんね』と。 中学生の頃からの初恋だった。 高校も先輩を追いかけてこの第一高校に入学したのだけど、その恋は、あっけなく終焉を迎えてしまった。 それで、放課後の教室で黄昏ていたのだ。 だけど自分が涙を流すほど 傷ついているとは思いもしなかった。 「なんでもないわけないだろ」 と大輝が隣に並び、空を見上げた。 やっぱり幼馴染に嘘は通じないな。 「......さっき葉山先輩に振られた」 「やっぱりな」 大輝の言葉にちょっとムッとする。 「もう!『やっぱりな』って何よ!それが失恋した女子に言う言葉?」 頬をふくらませると大輝は頭をかきながら「悪かったよ」と言い、「だけど」と口火を切った。 「竜二は、アヤメのことが好きって噂流れてたし」 「福原さんのことを?」 全然知らなかった。 思わず大輝の顔を見つめる。 大輝は何故か照れたようにそっぽを向く。 「あぁ。だからもう諦めろよ」 「言われなくてもとっくに諦めてます!」 涙をこらえて、空を見上げる。 するとふわりと抱きしめられた。 「え?大輝?」 「俺なら、陽葵を泣かせたりしないのに」 耳元で囁かれて耳が熱くなった。 ううん。耳だけじゃなくて顔全体が熱い。 「ど、どうしたの、突然」 大輝はわたしから体を離すと 「陽葵が好きだ。小さい頃からずっと好きだった」 とわたしに告げた。 え? まさか。 「わたしに告白してる?冗談でしょ」 笑い飛ばそうとしたけど、大輝の真剣な顔で、これは嘘じゃないと分かった。 「え、ホントに?」 大輝は頷いた。 「ちょっと待って、頭の整理が追いつかない」 大輝がわたしのことを好き?? 信じられない。でも事実なんだよね。 「いきなりこんなこと言ってごめんな。だけど俺は陽葵が好きだ。付き合って欲しいと思ってる。考えておいて」 それだけ言うと大輝は、教室を後にした。
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