わたしの気持ち

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わたしの気持ち

「昨日のデートはどうだった?」 菜々がまたもニヤニヤしながら聞いてくる。 「別に普通だったよ、雑談とかして」 わたしは黒板に書かれた文字をノートに写しながら 答える。 「どこに行ったの?ショッピングモール?」 「ううん、公園」 「え、公園?」 戸惑ったような菜々の声。 分かってるよ。初デートが公園って嘘でしょって思ってるんでしょ?! 「だって初デートでどこ行ったらいいとか分かんないもん」 「それなら私に相談してくれたら良かったのに」 菜々が不満そうに言った。 「あ!それは思いつかなかった」 菜々はクスクス笑う。 「陽葵って時々天然だよね」 「そうかな?」 自分では天然だと思ったことは無いけどな。 わたしは苦笑いを浮かべたのであった。 大輝とカレカノになってから一週間後。 大輝の部屋にて、ゴロゴロして漫画を読んでいると 大輝が飲み物とお菓子をお盆に載せて運んできた。 「ありがとう!今日のお菓子はおばさん手作りのケーキ?美味しそー!」 大輝のお母さんはパティシエでお菓子作りが好きなのだ。そして尋常じゃないくらい美味しい。 すると、大輝はちょっとムッとしたような 顔になった。 「もしかして、陽葵母さんのお菓子が目当てでウチに来てる?」 「……?当たり前じゃん!おばさんのお菓子は世界一だもん!」 「ふーん……」 「あれ?もしかして嫉妬してる? 自分のお母さんに?」 アハハハと笑うと大輝はわたしを押し倒した。 「……きゃっ」 「陽葵は、俺のこと、男として見たことあんのかよ」 悲しげなそれでいて怒ったような瞳にわたしは 戸惑う。 「え? いきなりどうしたの?」 大輝はわたしにキスをしようとする。 胸がドキドキと音を立てる。 そして唇と唇が触れ合いそうになったとき、 わたしは大輝を突き飛ばしてしまった。 「あ、ごめ……ちょっと心の準備が……」 大輝は「こっちこそごめん、いきなりキスしようとするとか最低だな、俺」 大輝が頭を搔く。 「……」 わたしは気まずい空気にいたたまれなくなって 「じゃ、わたし帰るね!」 と誤魔化すような笑顔を浮かべた。 「お、おう」 大輝も立ち上がり、わたしを玄関まで送ってくれた。 ドキドキと高鳴る胸に気づかれないかな?と不安になってしまう。 あれ?ドキドキ? 「じゃあね」 「おう、じゃあな」 大輝が笑うけどその笑顔はちょっと寂しそうだった。 帰路を辿りながらわたしは考える。 あのドキドキは何だったんだろう。 帰ったら、菜々に聞いてみよう。 わたしはそう心に決めた。
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