別れ

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別れ

放課後、わたしははぁっとため息をついた。 「どうしたんだよ、陽葵」 振り向くと大輝がいた。 「た、大輝」 大輝のことが好きだと自覚してから妙に ドキドキしてしまう。 「なんでもないの」 そう言いながらわたしはまたため息をつく。 「なんでもないわけないだろ……ってなんかこの会話デジャブだな」 大輝が笑う。 確かにわたしが葉山先輩に振られた日の会話とほぼ同じだ。 クスリと笑う。 「今日の菜々と陽葵なんか変だったし、 どうしたんだよ?喧嘩でもしたか?」 「喧嘩だったらどれほどいいだろうね」 わたしは三度ため息をついた。 恋というのは難しい。 大輝は?を頭の上に浮かべている。 「ちょっとね」 わたしは苦笑いを浮かべた。 「話したくないなら別にいいけどさ、あまり一人で抱え込むなよ」 大輝が隣の席に座る。 胸がキュンと切なく鳴いた。 菜々が大輝のことを好きなら、わたしたちは別れた方がいいだろう。 わたしは誰かを不幸にしてまで、 幸せになりたくない。 「ねぇ大輝」 夕日が眩しい。 「ん?」 大輝がわたしの方を見る。 「わたしたち、別れよっか?」 大輝が固まる。 「ホラ、わたし大輝のこと恋愛対象として見た事ないし、恋なんて分からないし。それに」 あなたを好きな人が他にもいるから。 「大輝を好きになる予感がしないんだよね」 わたしは笑顔で思ったこととは裏腹のことを言う。 大輝は唇をかみ締めた。 「だったら、だったらなんで泣いてるんだよ」 「え」 わたしは頬に手をやる。 湿っている。 わたしは泣いていた。 「陽葵は俺のことが好きなんだろ?ならなんで別れようなんて言うんだよ」 大輝、ごめんね。 顔をゆがめて苦しそうに言う大輝に罪悪感を覚える。 わたしは菜々に幸せになってほしいから。 涙がポロポロ落ちていく。 「ごめんね」 わたしはそれだけ言うと教室を後にした。 さよなら、わたしの好きな人。
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