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親友
あれから三日経ち、菜々もわたしと大輝の様子に何かおかしいと気づいたようだった。
「ねぇ、なんで最近大輝くんと話してないの?」
「……大輝とは別れたの」
わたしは目線を逸らす。
「え」
「安心して!菜々のせいとかじゃないから!ただわたしが大輝のこと好きになれなかっただけだから。だから、菜々大輝に告白しなよ」
にっこり笑うと菜々は
「ふざけないで」
と怒った口調になった。
「え?」
「陽葵が大輝くんのこと好きだってことぐらい分かるよ!授業中だって、大輝くんの事見てたじゃない!
なのに、別れるなんておかしいよ!私は大輝くんのことなんか全然好きじゃないし告白もしない!!だからねぇ、わたしのために別れたりなんかしないでよ」
顔を歪めて今にも泣きそうな菜々。
「わたしが大輝のこと好きになれそうもないのは本当のことだよ。だから嘘つかなくてもいいんだよ、菜々は大輝のこと好きなんでしょ?告白してきたらいいじゃん」
わたしは涙をこらえて優しく言う。
「……そうだよ、私は大輝くんが好きだよ!だけど私は親友の好きな人を奪ったりしたくない!だから告白はしない!もういいの」
菜々……。
「それはわたしだって同じだよ!わたしだって親友の好きな人を奪ったりしたくない!菜々には幸せになってもらいたいの」
「……陽葵」
菜々がため息をついた。
「大輝くんが陽葵のことを好きなのは目に見えてる。告白してわたしが傷つくに決まってるでしょ?」
「あ……そうだけど、でも……」
菜々にはいつも笑っていて欲しいのに。
菜々はクスリと笑う。
「私のことはもういいの。陽葵は自分のことだけ考えて。大輝くんにもう一度告白しなさい」
にっこり笑う菜々に胸が締め付けられた。
けど、同時にホッとしたなんて、酷いよね。
「ありがとう……菜々」
わたしは菜々を抱きしめる。
「うん、応援してる」
菜々が泣き笑いの声で笑った。
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