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息子たちは毎日塾があるので、夕食はいつも2人きりでしたが、その日の夕食はどことなく緊張感のある夕食でした。
「ひとまず無事が確認できてよかった」
夫が独り言のように呟きました。
拓実の携帯の電源が入ったということは、位置情報から居場所を特定できます。
しかし、夫はそれをしませんでした。拓実の捜索はしない。彼は頑なにその約束を守りました。
私はすぐにでも拓実を連れ戻したかった。どこで何をしてるかわからない。妙な事件に巻き込まれることだってあり得る。そんな不安が常に心を描き乱していました。
夫にそれを言っても、決して首を縦に振ることはありませんでした。
「俺にも似たような経験があるんだよ。丁度、拓実くらいの時だったかな。俺はすぐに捕まったけど」
私は初耳でした。結婚して20年。夫にそんなことがあったなんて、全く知りませんでした。
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