本 音

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 夫が散歩から帰るのを待ち、家族全員でリビングに集まりました。  2週間振りに会う拓実は、よく日に焼けて、少し逞しくなった感じがしました。  そして何より表情が違いました。目に芯があり、とても清々しい顔をしているのです。 「心配かけてごめん」  拓実はそう言うと、深く頭を下げました。 「家を出て、ひとまずこの地を離れた。お金に余裕はなかったから、快速や特急を乗り継いで、行けるところまで行こうと思って」  拓実は家を出てからの経過を話してくれました。 「九州の方まで辿り着いて、その日は安いホテルに泊まった。年齢をごまかして」  九州。しかも1人。何という行動力。  この子にそんな力があったなんて、全く知りませんでした。
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