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「1週間すると、農家の人とも打ち解けてさ。一緒に夕食を食べたりしたんだ。
で、聞いてみたんだよ。俺の素性は聞かないんですかって。
そしたら、『君の若さでフラりと来て、行く宛がないって聞いたら、何か聞けなかった』だって。
無用心にも程があるけど、田舎の人って何か大らかだなーって。
俺、感謝しかなかったよ。こんな人たちもいるんだ。まだまだ知らない世界があることを知ったよ」
拓実はやや興奮気味に話しました。
「毎日土に触れて、自然の中で生活していくうちに、自分の小ささを感じた。そして、自分の進むべき道は自分で決めたいって確信した」
拓実が身を乗り出して、はっきりと言いました。
私たちは黙って拓実の話を聞きました。拓真も自分とは違う感性を持った弟の話に聞き入っていました。
「俺、獣医になりたい」
夫は目を逸らすことなく、拓実と向き合っていました。
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