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「ここまで恵まれた環境を与えてくれて、2人には本当に感謝してる。
でも、俺の人生は俺が決めたい。
父さんも母さんも、俺には医者になってもらいたいだろうし、そのために俺を育ててきたことは、重々分かってる。
これは俺のわがままでしかないんだけど、俺は違った形で、自分の知識を活かしたいんだ」
拓実は夫と私の目を交互に見ながら、必死に訴えていました。
勝手に家を出て、ろくに連絡もせず放浪する息子を怒鳴りつけてやろうと意気込んでいましたが、拓実の真剣な眼差しに、私は圧倒されました。
皆、しばし沈黙。
夫は腕を組み、目を閉じて動きません。私も両手を膝に置いたまま、視線を落としてテーブルを見つめていました。
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