幸 色(さちいろ)

絶対的存在

　息子たちは私の言いつけを守り、一生懸命に取り組んでくれました。私はこの子たちが立派な医師になれるよう、勉強以外の一切を引き受け、毎日の食事にも気を付けました。

　努力の甲斐あり、2人とも私立の中学へ進学。2歳離れた兄弟でしたから、長男が3年生の時に次男が入学。2人とも医師になることを目標に、更なる勉学に励んでいました。

　勉学ばかりでは身体が貧弱になってしまう。ですので、中学に入ると野球部に所属させ、身体を鍛えさせました。

　ただし、塾のある日はそちらを優先させました。でもそれでよかった。最終目標は医師になることですから。

　野球は2人にとって、よい気分転換になっているようでした。初めて勉強以外で夢中になれるものに触れた。その経験は医師以外の道を示唆する可能性も十分にありましたが、それは私が許しません。

　2人にとって、私の言うことは絶対でしたから。