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「させてあげてよ。獣医の勉強」
突然、拓真が呟きました。
「医者は俺が継ぐよ。拓実がここまで真剣に話したのって初めてじゃん」
夫も私も驚きました。拓真も本当は自分の人生を自分で歩みたい気持ちもあるでしょう。しかし、それをおくびにも出さず、弟を擁護したのです。
私たちは顔を見合わせました。夫にはもう答えは出ているようでした。
「分かった。お前たちがそう言うなら、拓実の言う通りにしよう。拓真は医学、拓実は獣医学の道に進む。それでいいんだな?」
拓真と拓実が大きく頷きました。そして互いに顔を見合わせ、それとなく笑い合いました。
「これからは家出なんかせずに、ちゃんと話せ。俺たちもちゃんと聞くから」
夫はそう言って、顔をほころばせました。
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