幸せの色

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幸せの色

「おばあちゃん、行くよー」  彼女は私のことを『おばあちゃん』と呼びます。それは当然。私の孫なのだから。  九州の農村地帯。そこに広がる草原を、孫娘は走って行きます。私にはとても追いつけない速さ。遠くには放牧された牛たちが、のそりのそりと草を頬張っているのが見えます。  兄の拓真は医学部を卒業し、今は大学病院に勤務する傍ら、父親の手伝いをしています。そしてここは弟、拓実の仕事場。  拓実は獣医の免許を取得後、九州に移り住み、家畜の体調管理を一手に引き受け、毎日忙しくしています。  働き始めて、同じ研究所の事務員と結婚。若くして1児の父親になりました。  どこまでも続く青い空と、もくもくと湧き立つ白い雲。5月の緑は本当に眩しい。  今日は昼ご飯を持って、孫娘とピクニック。都会と違って、遠くに離れても走る孫娘の姿を見ることができます。
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