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「あのバカ!」
私はすぐに夫に連絡を入れました。夫はそれを聞くなり、感情を逆上させて言いました。おろおろする私と違って、夫はどっしりとしていました。
「ひとまず今日は早めに帰るから、お前は家に居てくれ」
夫はそれだけ言うと、電話を切りました。
夫が帰って来るまでの時間。私は家の仕事に手が尽きませんでした。何度時計を確認したことか。こういう時の時間はなかなか進んでくれません。
何をするにも、心ここにあらず。警察に連絡した方が良いのか?育て方が間違っていたのか?彼の素質なのか?いろいろなことが頭をよぎりました。
夫は夕方に帰宅しました。着替えることなく、リビングのソファーに腰かけました。
拓実からは連絡がないこと、警察には届けていないことを夫に伝えました。夫は自分を落ち着かせるように、腕組みをしたまま動きませんでした。
長い沈黙だけが、そこにありました。
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