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すれ違い
夜遅く、兄の拓真が帰宅しました。そして拓実の一部始終を伝えました。
「そっかぁ……」
拓真の最初の一言はそれでした。
「俺、拓実から相談されてたんだよ」
拓真が神妙な面持ちで言いました。
「あいつ、もがいてたんだ。
医者になることが絶対だって教えられてきたでしょ?でも兄の俺が医者になって、自分も医者になることが、果たして本当に正しい事なのかって。
そりゃ父さんは医者だし、母さんは必然的に息子を医者にすることが役割なんだろうなって、この年になって理解はできてたつもり。
今までそれを疑うことなく、頑張ってきた。
でも、ふと思ったんだろうね。このまま医者になることが、本当に自分のやりたいことなのかって。俺とは違って」
拓真は淡々と語りました。
私たち2人の親は、何も言わず、拓真の話を聞いていました。
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