竜飼いの娘

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 そんないやな笑い声のあと、アレクはぽつりと付け加えた。 「飼育にかかる費用も払おう。あの竜は、ひきつづきおまえたちで面倒をみてくれ」  彼は、まだ責任感は捨てていない。いまの自分にできることはやろうとしてくれている。  だが、それでは不充分だった。  ニナは震えながら彼に言った。 「あのとき若さまは、シャルに乗るためならどんなことでもやってみせるとおっしゃいました。あれは、その場かぎりのうそだったのですか?」  アレクが気色ばんだ。 「おまえに何がわかる! 私はずっと竜騎士になるのが夢だったんだ。なのにいきなりその夢を閉ざされて――こんな体になるのなら、いっそひと思いに死んだほうがましだった!!」  彼のしわがれた叫びに、ニナの顔はこわばった。  無我夢中で手が動いていた。 「だったら、わたしの体と換えてください!!」  自分の服を引きちぎらんばかりの勢いで、ニナは胸もとをひらいた。  ほとんど初対面の相手に肌をさらす羞恥心などなかった。  そんなことよりも、ぎょっとしたアレクの顔がみるみる青ざめていったことに、暗い喜びすらおぼえた。 「……竜血腫、です」  日に当たらない胸もとの白い肌には、血のような赤さのあざが広がっている。  竜血腫。
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