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ある日突然、竜飼いの体に赤いあざが浮かぶ病だ。
竜から離れれば症状は治まるが、変わらず竜と近く接する生活を送ると、あざは全身に広がり、やがて血を吐くようになって死に至る。
「わたしがシャルを育てたのは、たった二年です……なのに、もっとずっと長く竜を飼ってきた父さんも兄さんも平気なのに、わたしだけこんな病気になって」
ニナがいくら落ちついて話そうと頑張っても、声はますます震えてしまう。
これまでずっと胸に閉じこめてきた思いを勝手に外に出してしまう。
「どうして、って何度も何度も考えました。どうしてわたしなの、って。一生竜血腫にならない竜飼いのほうがずっと多いのに、なんでわたしなの、って。わたしはただ、シャルのそばにいられればよかったのに!」
ニナは部屋を飛び出し、幌馬車へと戻った。
「シャル!」
幌馬車からぬっと頭を差し出してニナを確認すると、シャルがうれしそうに降りてくる。
ずっと縮めていた翼を気持ちよさそうに伸ばし、頭を空へと掲げてあたりを見わたしたあと、ニナに頭を出してきた。言いつけをちゃんと守ったご褒美の催促だ。
「いい子いい子」
ごつごつしたシャルの頭をかきながら、ニナはにじんだ涙をぬぐった。
と同時に、胸の奥から何かがこみあげてえずきかける。
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