竜飼いの娘

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 ニナにとっては、シャルの世話以外はどんな仕事でも同じだった。  淡々と働きながら、おりおりにシャルの幸せを願うことが自分の人生になるのだろうと、ニナはぼんやり予想していた。 (シャル……きっと元気だよね。ちゃんと世話をしてもらってるよね)  その日の水くみの最中、ニナはふと空を仰いだ。 「え――」  そこに陽光を受けて黄金色に輝く竜がいた。竜はみるみる近づいてくると、離れた草地にふわりと舞い降りた。  そして竜騎士――アレクがその背からすべりおり、ゆっくりと近づいてきた。  ニナはその場に凍りついた。 「元気なようだな。よかった」  アレクの右目の眼帯はそのままだったが、もう杖はなく、普通に歩いていた。  ニナはあたふたとうなずきながら、彼と、その背後で忠実に待っているシャルとを交互に見つめた。 「シャルも……それに若さまもお元気そうで」  ニナは笑おうとし、実際に笑えたのだが、そうしながらも目の奥がじんと熱くなって涙が浮かぶことを抑えられなかった。  アレクは微笑みを返してくれた。 「今日は、おまえに新たな頼みをするために来た」 「は、はい、なんでしょう?」 「サムイル家の者として、王都の大学に行け」  ニナは目をみはった。まばたきも忘れてアレクを見つめる。
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