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日焼けが少し薄らいだその顔は、初めて彼がここに来たときの笑みをたしかにたたえていた。
「そこで、竜血腫の治療法を見つけろ」
「え――」
あまりにとんでもない命令に、頭がくらくらする。
ニナは頭を押さえながら、おずおずと反論した。
「で、でもわたしは、無学な竜飼いの娘です。そんな、大学での勉強なんて――」
「もちろんおまえは大学で苦労するはずだ。勉強でも、生活でもな。だが、おまえは私に体を換えてくれと言うほど、シャルのそばにいることを願っているのだろう?」
アレクはきっと表情を改めた。
「いまの私はまだ、ただの竜乗りだ。だが、王都騎士団の竜騎士よりも立派な竜騎士になってみせる。だからおまえもやってみせろ。シャルのそばに戻るために」
ニナに近づきたくて、シャルの尻尾がそわそわと揺れている。それでも忠実な竜はアレクの命令を守って動かない。
ニナも、シャルの頭をかいてやりたい。
この距離を埋められる可能性は自分の努力しかないことを、ニナは悟った。
できるのか、できないのか、それはわからない。
それでもやらないかぎり、状況は変わらない。
「私も、盟友の願いをかなえてやりたいんだ。そのための支援は惜しまない。どうだ、できるな?」
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