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「それだがな――破談だ。アレクさまから、今回の契約はなかったことにしてくれと連絡が来た」
ニナは息を呑んだ。
「そんな、どうして!?」
「さあな、知らん。さあ早く帰れ、シャルの世話は父さんがやる。足もとに気をつけるんだぞ」
父の注意もむなしく、ニナはふらふらしながら梯子を下りた。
どうして、という疑問がずっと頭を駆けめぐっていた。
ふと気づくと、岩山のふもとには兄も来ていた。
「聞いたか、ニナ。シャルは破談だとさ」
ニナはうなずいた。
「どうせ、もっと気に入った竜が見つかったんだろ。こっちの事情なんて、お偉い竜騎士さまにはまったく関係ないもんな」
兄はいまいましげに吐き捨てたが、今度はニナはうなずかなかった。
(でもあの人、シャルのこと本当に気に入ってた……)
§ § §
部屋に戻ったニナは、シャルと竜騎士アレクとの顔合わせを思い出していた。
彼はまず、シャルに微笑みかけた。
大きくなっても神経質なところのあるシャルは、見慣れない竜騎士を警戒しつつじっと見た。
アレクは強引にシャルに触れようとせず、まるで握手しようというかのように片手を差し出した。
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