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――おまえはシャルというんだな。私はアレク、おまえこそをわが盟友にと願う竜騎士だ。どうだ、その賢い目に映る私は合格か? 失格か?
シャルは警戒して口をわずかに開け閉めし、牙をのぞかせた。
それでも動じる気配がないアレクをしげしげと見やると、ちらりと舌を出し、差し出された彼の手をぺろりとなめた。
(この人、竜のこと――ううん、シャルのことをわかってる!)
ニナはこのときも隠れ見ていた。そしてアレクに感心した。
一般的な竜の扱いも熟知しているのだろうが、それ以上に、この若い竜騎士はシャルという竜をよく見ていた。シャルの気が済むまで待ち、決して無理強いしなかった。
(この人なら大丈夫)
そう心から思えたから、ニナは安心してシャルを託すことができたのに――それが破談とは。
ニナはおとなしい娘だった。
父と兄の言いつけをよく守る、素直な娘だった。
だが、彼らに逆らってシャルを育てると申し出たときと同じように、このときもふたりに逆らった。
§ § §
ところどころで道を尋ねつつ、幌馬車に乗ったニナはサムイル家の領地にたどり着いた。
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