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シャルの面倒を見はじめてすぐのころから、ニナは競り市が心配だった。
神経質なシャルが、競り市での無遠慮な目と手に耐えられるとも思えない。暴れてしまうかもしれず、そうなれば父は、売れ残るよりもたたき売り同然の安値をつけることを選ぶだろう。そして安物を大切にする者などいない。
だが、そこにアレクが現れてくれた。
彼ならシャルを大切にしてくれる――そう安心できた。
「あなたがシャルを選んだように、シャルもあなたを選んだんです」
あのときアレクは、シャルに認められるまでの数時間を辛抱強く待っていた。
見た目と匂いと味と、彼自身のすべてをシャルに差し出して、飲み食いどころか座ることすらせず、シャルの決断をひたすらに待っていた。
そしてその間、彼は希望にあふれた声でシャルに語った。
代々の先祖と同じ竜騎士となることが、物心ついたころからの自分の夢だったこと。
見習い期間を経て、やっと自分の竜を持つことが認められたこと。
そして空を舞うシャルを見かけたこと。
――おまえは本当に見事な竜だ。太陽のように輝き、雲のように軽やかで、風のように飛んでいた。私は、おまえに乗るためならどんなことでもやってみせる。
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