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一心不乱に夜空を飛んでいると、真下にみどりの姿がみえました。
彼女は何かを探しているようでした。ひどくうろたえています。ああきっと、とハンカチは気づきました。彼女は自分を探しているんだ。
風がやみました。ハンカチは浮力をなくし、やがてみどりの目の前にパサリと落ちました。
「やっと見つけた!」
みどりがハンカチを拾い上げ、愛おしそうに胸に抱きます。
「こんなところまで飛ばされてきたんだ」
ごめんね、とみどりはいいました。わたしの干し方が悪かったんだよね。
「ねえ、おばあちゃんのぶんまで一緒にいてね。あなたは、わたしにとって世界でただ一枚の大切なハンカチなんだから」
ぽつり、とみどりの瞳から一粒の涙がこぼれました。その涙をうけとめたハンカチに、彼女の想いがしみこみます。
それはかなしみではありませんでした。もっとあたたかで、ずっと身をひたしていたいと思えるほどに心地よい感情。愛する誰かと一緒にいられることって、こういう繰り返しなのかもしれないとハンカチは思います。
僕もうれしいよ、みどり。
うれしくて生まれる涙があることを、ハンカチははじめてしりました。
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