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七、駆け落ち
離反を翌日に控えた深夜。
私と貞昌は最後の夜を共に過ごし、眠りに落ちていた。
私は意外と言うべきか、すっかりと寝入っていた。しかし何者かに揺り動かされて目を覚ます。
「……おふう、おふう」
呼ぶ声は貞昌のものだった。
「……おふう、逃げよう」
「はい? 何を言っているの」
「だから、僕はどうなってもいい、おふうといたい」
「駆け落ちするって言うの?」
「そう、ずっとずっと、ずっと一緒に逃げよう!」
そう言うと貞昌は私を、今までで一番きつく抱きしめた。
私は、心の底から嬉しかった。
まだ十四歳と十六歳。夫婦と呼ぶには若すぎる私達。これから子も設けたいし、そのあなたに似た可愛い子とともに、したいこともたくさんある。
何度泣いて、何度自分に鞭打って、そんな未来を諦めさせたことか。
それが今再び帰ってきてくれたような、そんな温もりを感じた。
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