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追手の男達 その4
アリスの手の中のガラス玉が輝くと同時に、「戻す」能力は発動していた。手の中の丸くなった紙に夜空の輝きが集まり、それはある指向性を持ってアリスの腕を引っ張る。
「野郎! 何をする気だッ!」
焦ったベルが声を張り上げる。メイの顔にも若干の焦りが生じる。それはアリスの『才能』の発動のみならず、ベルの大声にも向けられていたようにアリスは感じた。
そして準備を完了したアリスの『才能』は動き出し、その力の中心となる紙を、そしてそれを掴むアリスを宙へと放り出す。
「やった! 発動したわ!」
アリスはメイとベルの間を縫うように飛び、紙の元あった場所、つまりブラウンのボストンバッグへと向かっていく。
背後でベルの騒ぐ声を聞きながら、アリスは必死にその紙にしがみついていた。ふと振り返った先でメイがベルを宥めながら、こちらを見て笑ったような気がした。
「とにかく、彼等のような人間と戦えるだけの何か、少なくともこの世界に対する知識が必要ね……」
頬を掠める枝葉を感じながらアリスは呟く。紙を引っ張る『才能』の力は強く、速度は相当なものだった。
この『才能』、出来ることをしっかりと認識しておく必要がある。アリスはしばし脳を休め、到着後に備えることにした。
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