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ジョニー・ウォーカーがやってくる! その2
ジョニー・ウォーカー。アリスはその名前を耳にしたことがある。
「ジョニー・ウォーカー……。 あんたは俺を消したんだ。 奴があんたを追ってくるぜ......」
ブラウンは消失する直前、そう言った。追ってくる……。『才能』の輝きを見て、彼はここまでやってきたのだろう。
でも、目的は……?やはり彼も私の、そしてメイやベルのモチーフとなるものが目的?でも三人よ。三人もいるところにわざわざ現れる理由が分からない。どう考えたって三人を相手取るのは苦労するって分かるはずだもの。いや、それは自信の表れ……?何にしてもこの男はやばい。ベルをバラバラにしたあの『才能』、ブラウンの忠告じみた言葉、そしてあの妙な雰囲気。確実に危険な人間……。
「おい! 聞いているのか! お嬢ちゃん!」
アリスは思考の中に閉じこもっていた自分自身を認識する。
「ご、ごめん! ちょっと考え事を……」
「馬鹿野郎! あいつ、ジョニー・ウォーカーだ!」
「分かってるわよ! さっき名乗ったもの!」
「違う! そういうことじゃねえ! あいつはとにかくやべえんだ! 協力しろ!!」
メイの焦燥がアリスにも伝わる。アリスに向かって叫びながらもその目は常にジョニーを捉えている。
「ふふ、君は失礼だな。 僕は君達のことが知りたいだけだよ、理解したいんだ」
ジョニーはそう言いながら木に手を当て、寄りかかる。
「まずは名前。 そちらの女性から聞いても良いかな」
突然意識を向けられ、アリスの心臓は音を立てる。
「ア、アリス……」
「アリス! 素敵な名前だ! 今度ティーパーティに招待してあげよう!」
ジョニーは高らかに笑う。その笑いは素直で、どこか上品で、狂気じみていた。
「アリス……良いか、協力だ。 俺の才能は『特定』だ。 色々な情報を読み取ることができる。 お嬢ちゃんの才能や場所を知っていたのはこの才能のおかげだ」
メイが小声でアリスに言う。
「この場さえ乗り切ることができたら俺達は今後お嬢ちゃんに手出しはしない。 その代わりベルを助け、どんな方法でも良い、奴を撃退するんだ」
「逃げるじゃだめなの?」
「だめだ! 奴がいる限り俺達に安全はない。 森を抜けられるかどうかも怪しい」
「おいおい、陰口か? ひどいな全く。 そっちの男性は? 名前を教えてくれよ」
相変わらずジョニーは姿勢を変えることなくアリスとメイを見ている。アリスは考える。この状況、どうやらメイと協力するのが正しい選択肢。そうだとしてあの男を撃退するにはどうするか。メイの才能『特定』をどう生かすべきか。
「奴の才能、『分解』だ。 手に気をつけろ。 一回でも触られたらアウト。 ベルみたいにバラバラにされちまう」
「なあ、答えろよ君」
ジョニーが苛立ち始める。メイが動き出す構えを取る。
「くるぞ!」
メイの咆哮とほぼ同時、ジョニーの手をかけていた木がバラバラになりながら倒れてくる。薪ほどの大きさまで『分解』されたそれらは大きな音と土煙を立てながらアリスとメイを分断する。
「メイっ!!」
アリスの声はかき消され、メイとジョニーの姿は煙の中に飲まれていった。そして、アリスは走り出す。
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